– 山門を入ると、左右には大きな杉があって、高く空を遮ぎっているために、路が急に暗くなった。
その陰気な空気に触れた時、宗助は世の中と寺の中との区別を急に覚った
-夏目漱石 「門」より-
市内で計画していました、お寺の門徒会館・納骨堂が竣工しました。
高低差のある敷地の特性や駐車場を道路側に確保することが前提となり、建築できる場所が奥まった位置になることから、お寺の一部でありながら、お寺であることを認識する何かを道路側に計画することが難しい条件の中、検討を進めている最中に奈良の東大寺を訪問しました。
訪れたときに出迎えてくれる南大門はそこからがお寺であることを教えてくれる役割を果たしていると同時に、門の何が私たちにお寺に来たことを認識させているのかをふと考えました。
門を構成する様々な要素を紐解き、連なる肘木がその一旦をになっているのでは?という考えに至り、今回の計画では外壁に庇と外壁を繋ぐような厚さ4mmのステンレスルーバーを設けました。
深い庇と肘木のようなルーバーによって、そこに門がなくてもお寺の一部であることを認識できるような建築を目指しました。
これから多くの人たちを出迎えてくれる存在になっていって欲しいと願っています。
(anai)