長文は書かないことに決めていたブログですが、今回はお許しを!
昨日は西日本工業大学の准教授に着任した、建築史家の倉方俊輔さんの歓迎会で、九工大の徳田先生+建築家の矢作さん+橋迫・田中+学生10名の集まりでした。
どの分野も似たところがあると思いますが、歴史を勉強すると「未来」が見えてきます。なので歴史の専門家は「今」目の前にある建築がどういう価値を持っているのかを見いだすことが私たち以上に得意だと理解しています。同世代で設計を専門にしている人は沢山いますが、歴史を専門にしている人は希有な存在です。倉方さんが北九州に赴任してきたことは私自身にとって大きな出来事で、早速、色々話を伺いました。
まず、九州の建築家について議論が及びました。薄々勘付いてはいましたが(笑)やはり九州の建築家は恵まれているようです。「人口に対して供給する側が少ないこと」や「敷地が恵まれていることが多いこと」「施工者の質の高さ」「九州人の気質」も私たちにとっては好条件のようです。
では、私たちがその状況を理解して、新たな建築の可能性に繋げ、社会に貢献出来ているのか?というと疑問が残るようです。もっと、自分自身の置かれている状況を客観的に把握して、それを利用し、より過ごしやすい環境を提供しなければなりません。良い土俵を与えられることに慣れていて、その状況に甘んじているのではないかという指摘でした。
次に出来上がった建築をどのようにして人に伝えていくかに話が及びました。
これまで私たちは目の前にいるクライアントのため、その建築を利用する人のために色々思索を巡らせ設計してきました。その姿勢は今後も変わることがないと思います。ただ、そのプロジェクトに与えられた条件は、そのクライアントに限らず、九州内に限らず、世界中で似たような状況にあるところは沢山あります。私たちが世界中にある沢山の建築を参照させてもらいながら設計を進めている状況を考えると、私たちも情報を提供していく必要があるし、結果受ける評価を更に次の設計に生かしていく努力を今まで以上にしていく必要があることも指摘されました。設計した建築を再度見返し、公表していくことを避けている。手段は何であれ、公表することは間違いなく私たちの励みになるはずです。
このように歴史家は私たちに広い世界を垣間みさせてくれます。踏み込んでみたい気分にさせてくれます。今後活動していくうえで沢山の教訓を与えていただきました。
写真は倉方さんの著作「吉阪隆正とル・コルビュジェ」王国社